| ドイツ・オーストリアの住宅展示場に見る「モダンデザイン」 |
文・石母田 秀隆(マザー企画事務所) 写真・ツーベアホーム
工場内は技術情報や生産ラインは秘匿中の秘匿ということもあり写真撮影は固く遠慮を求められたので紹介できないが一端を紹介したい。スティーベル社は日本では蓄熱式電気暖房機で有名だが、電気温水器やヒートポンプ式温水暖房システム、地中熱利用のシステムなど多岐に亘り省エネシステムを開発生産している会社である。伺った本社工場は整然としており、合理的な工業機械と厳格な技術者により1台1台丁寧に作られていた。また、商品やシステムの的確な設置を徹底するべく「スチューデントハウス」という教育施設を設け、施工業者や販売店への技術指導が実施されていた。見学者も多いようで、同日はオーストリアからの見学団も一緒であった。 ![]() ところで同社の日本法人日本スティーベル社はこのたび新型蓄熱式電気暖房器をリリースした。大きな特長は「シーズンセンサー」という外気温度に合わせて蓄熱量を自動コントロールするもので蓄熱量の調整が機械任せにできるものである。また、新開発のソフトファンにより室温と蓄熱量に応じてファン回転を比例制御するという。さらにリモコンで離れた場所からでも必要とあれば操作もできる便利機能も充実している。さすが、老舗メーカーの所産とうなるばかりである。 ![]() 1997年から、当時勤務していた会計事務所の顧問先に出向という形で赴任し、約2年半ドイツのブレーメンに在住しました。赴任後しばらくの間はなかなかドイツの暮らしに馴染めずホームシックの日々でした。特に東京での便利な暮らしに慣れていた私には、日曜日はデパートをはじめ小売店がすべて休みで、平日も午後8時には閉店、銀行や郵便局も2時間昼休みで閉まってしまうという、消費者の利便性より労働者の権利を優先する考え方に同調することができずにいました。 ![]() ドイツ人の暮らしは、家族と過ごす時間を重要視し、勤勉ではありながらプライベートの時間を仕事の犠牲にすることは一切なく、また法律でも保護されています。そのため、家族との時間を過ごす居心地の良い空間を創るための労を厭わず、家は「購入する」という認識ではなく、自分達の手で創り上げていくものと考え、ハウスメーカーや建築家に躯体部分の建築を依頼しても、その後の仕上げ部分などは休日などに自分で施工する人が殆どで、中には躯体まで自分で施工してしまう人もいる程です。前号でもセルフビルドの記事がありましたが、当時近所のおじさんは10年前から家を創り始めて未だに建築中の状態でしたが、満足げに毎週末の家造りを楽しんでいました。快適な住空間を創る事自体がライフスタイルの一部になっているという感じでした。 ![]() 私にとってのカルチャーショックの一つにドレーキップ窓もありました。ドイツの住宅の多くがドレーキップ窓で、2方向に窓が開き、キッペン(上方のみ傾斜)した状態のまま外出しても防犯上問題ないという合理的かつ機能的な窓には感心させられました。ドイツ人はきれい好きで、ドレーキップ窓を内側に開き、毎日窓拭きをする主婦の姿もよく見かけました。また、窓の下に花台を設け、季節の花々をデコレーションするのもドレーキップ窓だからこそ容易にできることです。そんドイツ人の住まいに対する考え方や、ゆとりある暮らし方などに触れ、住宅建築に興味を持ったのがきっかけで現在の私があり、ツーベアホームのドイツ研修に私のドイツ在住経験が活かされているという相互関係が面白い巡り合わせだと思います。
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ドイツというと観光雑誌などから脳裏に刷り込まれてしまったせいか、市街地に多い木骨の住宅のイメージが強い。また、田園風景に溶け込むあの三角の大屋根の印象も強いが展示場内は様相が異なっていた。一言でいうと「モダン」。質実剛健の国民性といわれるドイツ人の住宅志向は、別の表現をすれば保守的に伝統を重んじる傾向かなというのは筆者の偏向的な思いだった。モダンスタイルが実に多く、隣のデザインを意識しながら競い合うように建っている。表紙にその典型的なものだけを集めてみたが、屋根形状も、建物形状もまるで未来型というかコンセプトモデルというか、見学の目を楽しませてくれる建物が実に多かった。そこには木骨住宅の感性は見当たらない。
構造材や断熱構造が何百年も前と同じではないので、多様な材料を駆使できる現在だから写真のような思い切ったデザインが可能になるのだろうが、デザイナーの表現の場さながらの展示場にまずは目を奪われた。
例えばバルコニー。木製であっても単にバルコニーとしての機能性だけでなく、外観デザインとしてトータル的に配慮されている。金属製であろうとも冷たさや付け足しの感じがまったくない。月並みな言い方だがお洒落である。
マイナス20℃にもなるドイツの住宅は寒さ対策のため、さぞ窓は小さいのだろうと思いがちだが、開口部の大きさに驚く。別に最近の住宅でなくても大きな窓は珍しくない。
窓の断熱性能がよいことと、外壁の断熱仕様がきちんとしていることが可能にしているといえる。厳寒の冬に日射を摂取するにも大きな開口は有利である。日本の「住宅の次世代省エネ基準」も日射取得を考慮に入れているが、住宅デザインはこのように科学的裏づけがあって、自由にデザインされるものである。それがひいては住む人の総合的なメリットにつながる。ツーベアホームの窓が大きいのもその考えに基づいている。




